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乱暴なロマンス

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乱暴なロマンス Wild Romance 全16話 (2012年韓国 KBS)
■演出:ペ・ギョンス
■脚本:パク・ヨンソン 
■キャスト:
イ・ドンウク(パク・ムヨル)
イ・シヨン(ユ・ウンジェ)
カン・ドンホ(キム・テハン)
オ・マンソク(チン・ドンス)
ファン・ソニ(オ・スヨン)
イム・ジュウン(キム・ドンア)

【あらすじ】
カラオケボックスで父ヨンギルの誕生日パーティーを楽しむウンジェの家族。酔った状態で父ヨンギルと弟チャンホはプロ野球チーム レッドドリーマーズのスター選手パク・ムヨルを目撃する。ブルーシーガールズの熱狂的ファンのヨンギルは、プロ野球の韓国一位を決める韓国シリーズの対戦相手で試合中に事件を引き起こしたムヨルに因縁をつけ言い争いになる。この光景を見て興奮した柔道5段のウンジェはムヨルを投げ飛ばす。
この場面をカラオケボックスのアルバイトが携帯電話で撮影し、インターネットで一瞬のうちに流してしまう。プロ野球選手のムヨルにとっても、ガードマンという職業に就くウンジェにとってもこの事態は相当深刻なダメージ。どうにか解決するためにウンジェとムヨルは再び対面することになり…。

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「太陽を抱く月」がライバルだった「乱暴なロマンス」。視聴率は、惨憺たる数字だったらしいですけれども。

このブログでも散々書いておりますが、脚本家パク・ヨンソンの描こうとする世界観が、非常に好きな私は、本作でも大満足でした。あまりにも世界観が好きなので、1話1話詳細に、考察していこうと思ったのですが、暑さともろもろの事情のために、あえなく挫折。総評だけを。

「ロマンス」と銘打っていますが、「ロマンス」じゃないのよね。このドラマ。
まず、このドラマの評判をあまり聞かないのは、イ・ドンウク主演だからということで、皆さま過剰に、ロマンスを期待されて、肩すかしの気分を味わっちゃうせいなのかしら。
やっぱり、「恋愛至上主義」のような「太陽を抱く月」の方が、好評なのかなぁ。
(蛇足ですが太陽抱月」視聴中でございますが、あまりにも登場人物が恋愛のことしか、考えていないのでちょっとびっくりしています・笑)

脚本家のパク・ヨンソンは、恋愛すらも、人間の心に忍び寄る「悪意」のきっかけのひとつとしか、見ていないふしがあるように思う。
例え、どんなに好きあって、互いを信じようとしても、ふと心に忍び込む、「嫉妬」。その感情が、ゆるやかに変化していき、「悪意」を形作っていく過程を描く手腕は、お見事。

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そう、この、「乱暴なロマンス」というのは、前作「ホワイトクリスマス」の続編でもあるのだ。
「悪魔は生まれるのだろうか。作られるのだろうか」という前作のテーマの、変奏曲ともいえる。
パク・ヨンソンの作品に、恋愛要素を期待しちゃだめなのよね~
恋愛なんて、自分が頭の中で計算して、するものではなく、ある日突然、まるで雷にあったかのように、目を空けた瞬間、恋に落ちているものなのだ。
だから、ムヨル(イ・ドンウク)も、突然、目を開けた瞬間に、恋に落ちているのだ。

「乱暴なロマンス」の視聴の醍醐味とは、恋愛をはじめとした、人間の感情を強く強く揺り動かす感情が、どうその人を変えていき、そしてその感情が・・・ここでは「悪意」だが、どう他人に伝染していくのか。
ということを主眼にしているように思う。
「羨望」「嫉妬」「愛情」「執着」「失意」「コンプレックス」という感情が、善良な人たちを変えていく様を、コメディという設定のオブラートに包みながらも、私たちに提示してくるのだ。
前作「ホワイトクリスマス」はミステリーだったが、今作ではラブコメという、装いだけ変えて、しかし脚本家が私たちに見せたいテーマは変わっていないのよね。

ものすごく、ビターな作家さんだと思います。
このドラマを見ながら、昨今の日韓をめぐる政治情勢を鑑みちゃったりして。
ほら、「悪意」(とは言い過ぎだが、互いに対するマイナスの感情)の伝染は、なんと素早く両国間を取り巻いていっちゃったのでしょうね・・・

このドラマでは「悪意」に対抗するのは、ただ、「互いを愛し、信じることだ」と述べていますが、その考えだけで「悪意」に対応するのは、なんとも心もとない。
ムヨルは言う。
「死ぬまで愛している、とは言えない。だが、今は死ぬほど、お前を愛している」と。
どんなに激しい恋愛感情でも「今」なのだ。
そこに、アイロニーを感じるのは、私だけだろうか。この「恋愛」も永遠ではない。人間は生きている限り、心は動いていて、動くからこそ「悪意」が忍びこんだりするのだ。
そんな、「愛情」でしか、「悪意」に対抗できないのかもしれない・・・

やれやれ。人生って、なんてワイルドなんでしょうか。
「情愛」と「悪意」の間を、揺れ動いていくんでしょうね、これからも私たち。
願わくば、あまり「悪意」に引きずられないように、生きていきたいものだわ。

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主役カップルはよりも目立っていたのが、この室長とドンアのカップル。
このカップルは必見ですね。ロボットのように感情を押し殺した男が、常識はずれの女の子と関わることで、どう変化していくのか。
誰かとのコミュニケーションで頑なな心が、ほどけていく様を視聴するのが楽しみだったわぁ。
やっぱり人間を変えていくのは「悪意」だけではない。
「愛情」という温かな気持ちで、人を変えうることができるのだ、ということを見せてくれました。
(「愛情」はもろ刃の剣ですがね・・・ 一歩間違えば、「悪意」になったりするし)

ミステリー仕立ての、「乱暴なロマンス」
犯人が犯行にいたる過程も、わかりたくないようで、わかるのよね。誰しもが犯人になる可能性を秘めている、というところも、考えれば怖いですよね。
by moonlight-yuca | 2012-08-29 14:55 | 乱暴なロマンス
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