人気ブログランキング | 話題のタグを見る

nothing hurt

yuca88.exblog.jp ブログトップ

ダブルフェイス偽装警察編

ダブルフェイス偽装警察編_a0192209_2281993.jpg
ダブルフェイス (2012年 日本TBS-WOWOW)
「インファナル・アフェア」のリメイク作品

■監督:羽住英一郎
■脚本:羽原大介
■キャスト:
西島秀俊(森屋 純)
香川照之(高山 亮介)
角野卓造(小野寺)
小日向文世(織田 大成)

【あらすじ】
高山亮介(香川照之)は、若い頃に織田大成(小日向文世)率いる織田組に拾われ育てられてきた。織田の命令に従い警察官となった亮介は、県警で順調に出世をし、警察の内部機密を織田に流す活動を続ける。そんな中、亮介は織田の指示で有力政治家の娘・末永万里(蒼井優)に接触。自由奔放な万里に心を揺さぶられ、自分の生き方に疑問を持った亮介は、やがて織田との関係を解消したいと願うようになる。
一方、長年、織田組で潜入捜査を行ってきた警察官の森屋純(西島秀俊)は、警察と織田組の衝突以降心を通いあわせた医師の奈緒子(和久井映見)とも連絡をとらず、生きる場所を見失っていた。
亮介は潜入捜査官と思われる純への連絡に成功。彼と手を組み、自らの人生から“闇”を取り除く計画を思いつく…。そして、2つの顔を持つ2人の男の、自らの存在意義と人生をかけた最後の戦いが始まるのだった。

ダブルフェイス偽装警察編_a0192209_22154647.gif

よかったなぁ。「インファナル・アフェア」のリメイク作品なんて、今更・・・なんて思っていた不明を恥じます。
映像、カット、音楽、すべてに無駄なものを省き、研ぎ澄まされている。
「潜入捜査編」も「偽装警察編」も、ファーストシーンは雨の中から始まる。
この「雨」も意味があるんだろうなぁ。

世界からの孤立を表している。罪の隠ぺいを、自分の出自の隠ぺいを表している。闇に堕ちている自分に対する憐みの涙を表している。
「雨」一つとっても、深い意味が込められているし、同じように、「インファナル・アフェア」を本歌取りしながら、さまざまなキーワードをちりばめることで、この作品は違った奥行きが出ているよね。

「インファナル・アフェア」では、ねっとりした暑さの中、香港返還前後の香港の諦観、不安、狂乱が視聴者を息苦しくさせる。
「ダブルフェイス」は、その点、スタイリッシュすぎて、果たしてそのじっとりと身にまとわりつくような焦燥感というのは伝わってこない。ただ、光と闇の陰翳を執拗に映像で表現することにより、どこまでも、闇に沈んでしまっていこうとする男たちの、悲しさは伝わってくる。

「花火」「雨(水)」「シャンパン」「ラーメン」「刺青」「花束」「ガルシア・マルケス」・・・ひとつひとつのキーワードからは、ただただ悲しさだけが伝わってきて、切ないなぁ~
特にガルシア・マルケスには、ぐっときました。

(続きは結末に触れています)




ダブルフェイス偽装警察編_a0192209_2239184.jpg
この原作は「無限道」というタイトルで、「インファナル・アフェア」3部作を視聴後に、その言葉の重さを実感する仕掛けになっている。
しかし、「ダブルフェイス」はラストを少し変えてきていて、さらにこの映画の「無限道」の、恐ろしい意味を視聴者につきつける。

ほぼ、原作に近いリメイクだったのに、ラストを変更することにより、ずっしりと重い何かを、私たちは受け取るのだ。
救いようのない、悲しさを。
結局、彼らは自分のアイデンティティを取り戻すことができずに、永遠に、誰ともわかり合えない孤独をさまようしかないのだろう。
「百年の孤独」・・・ガルシア・マルケスという作家の名前を劇中に登場させることにより、彼らの孤独に想いを馳せる。一人だけ違う世界に佇む孤独は、計り知れない。
誰とも何も共有できない孤独、
それが静謐な雨のシーンに描かれているような気がする。

わかりあえたかもしれない・・・いや、互いだけが一番互いを理解できたであろう二人が、しかしわかり合えぬまま、百年の孤独に身を沈めていったのだ。

ダブルフェイス偽装警察編_a0192209_22514997.jpg
キャストも申し分ない。
ただ、香川氏が重厚すぎて、「犬である」ことに悩んでいるようには、疲れているようには見えなかった。
高山が手に入れたかったもの、守りたかったもの、というものが今一つ私にはピンとこなかったなぁ。
それは俳優の並びがしっくりこなかったという意味で。香川照之と蒼井優の、恋人同士というには年齢差が中途半端で、しっくりこなかった。このカップルは同居人、静かに寄りそうことで傷を癒しているようなそんな関係であり、恋人同士ではなかった。どうしてそこだけ設定の説明不足感が否めないのよね~

ストーリーとしては、突っ込みどころ満載ですが、もうそのことに触れちゃあヤボですね。
自分が誰だか、わからなくなった男の悲哀を味わうドラマですもの。

森屋純は、やっぱり森屋純で、どこまでも、胸が痛くなるくらいまっすぐで、哀しみの中に立ちすくんでいる男だったなぁ。
by moonlight-yuca | 2012-10-27 23:03 | ■日本ドラマ■
line

blogお引越ししました。


by yuca
line