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the silver metal lover

銀色の恋人 タニス・リー

【あらすじ】
シルヴァー―エレクトロニック・メタルズ社が試作した人間そっくりのロボット。とび色の瞳に赤褐色の髪、銀色の膚をしたシルヴァーはギターをつまびき、ありとあらゆる歌をかなでる。ひとびとは心を揺さぶるその歌をきそって聞きたがった。だが、たったひとつエレクトロニック・メタルズ社にとって誤算が生じた。シルヴァーに恋する少女が現われたのだ!物語の名手が紡ぎだす、少女とアンドロイドとのSFラブロマンス。

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■ ■ ■ ■

硬質な文章のSF作家タニス・リーの、稀有なラブロマンス。
こんなに、みずみずしくって、ひたむきで、生きていくということが書かれているロマンス小説は読んだことがない。

「絶対彼氏」の元ネタであると言えば、お話の展開は想像できるだろう。
しかし、「絶対彼氏」の数千倍も、泣けるのは、少女が大人になると言うことはどういうことか、世界に立ち向かっていくことはどういうことかをほろ苦く、苦く、描いているから。
ものすごく苦いけれども、ものすごく甘い、セクシャルで、哀しい、ロマンス。

そして、少女だけではなく、セクサロイドのシルヴァーの、成長物語でもあるから。

「ジェイン」
少女の名前。「ジェーン・エア」(ロマンス小説の傑作!)の主人公と同じ名前なのは、読後にわかる仕掛け。

青春の愚かしさと、ひたむきさと、大人になることへの恐れ、そして何よりも誰かを大切に思う気持ちが、あふれてきて涙する。
誰かを愛するということはどういうことなのか。
誰かを失うということはどういうことなのか。

心が疲れて、やさぐれてしまいそうな時は「銀色の恋人」を読み返す。
あのころの、みずみずしい魂の私に戻れるような気がして。
by moonlight-yuca | 2012-12-28 22:40 | ■本■
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