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お前の事を考えない日は一日もなかった

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「・・・私に会いに来たって言うの?」
「他に誰がいる?」
「ここ、近々取り壊されるんですって。
それで、ちょっと来て見たの。・・・私に、何か用?」
「少し聞きたい事があってね」
「聞きたい事?」
「あの日、俺が捕まってからの4年間。
お前は、幸せだったのか?」
「どうしてそんな事を?」
「俺は4年間鉄格子の向こうで、お前の事を考えない日は一日もなかった。
お互い金を目的に、策略で始まった不破との結婚生活が、
お前にとって幸せなものであって欲しい。
お前が幸せであればあるほど、今度会ったときは情け容赦なく
お前から何もかも、その笑顔まで奪い取ることが出来る。
そう考えて、その日が来るのをどれだけ心待ちにしていたか。
お前から奪い取って踏みにじる事。
それだけがこの4年間、俺の生きる支えだった」
「だとしたら、ようやくその通りになったのよ。今は満足でしょ」
「ああ。そのはずだった。だが、お前は本当に幸せだったのか?
俺は、不幸な女をより不幸にしただけじゃないのか・・・?」
「何言ってるのよ。幸せだったわ、決まってるじゃない。
ここで暮らしてた頃とはまるで違う、何不自由ない生活よ。
全てが贅沢で、華やかで満ち足りて、この上なく幸せな毎日だったわ。
そんな女から全てを奪ったんですもの。
貴方はもっと喜ぶべきよ。なのに、何でそんな顔をしてるの?
狙い通りゲームに勝ったのよ、もっと喜びなさいよ!
・・・それとも、負けた私を哀れんでるの?
だとしたら、大きなお世話だわ!
この4年間、私は奥様と呼ばれて夢のような時間を過ごしてきたの。
思い残す事なんてもう何もない。あるとすれば・・・
・・・・・・いえ。何でもない」
「これからどうする気だ?」
「・・・そうね。また、大金持ちでも探そうかしら。
金が目当ての結婚も、2回目なら上手くいくでしょうから。
・・・それじゃ」
「待てよ!」
「まだ何か?」
「あの日の夜、もし不破から電話が掛かってこなかったら、
・・・今頃俺たちどうなってたろう?」
「・・・何を言い出すかと思えば。
多分、どうにもなってやしないわ、きっと。
こうして今と同じようにここで立ってたでしょうね。
貴方も私も、たとえ一途の感情に任せて愛を選んだとしても、
きっとすぐに後悔して、また金を選んだに違いないもの。
でも、手に入れたものより、手に入れられなかったものに心を残すって言うわ。
愛を選べば金に、金を選べば愛に。その繰り返し。
その点、貴方はさすがだわ。
愛も金も、両方手に入れたんですもの。敬服するわ」
(美しい罠 61話)


槐の類子への告白。胸に響く。
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by moonlight-yuca | 2011-01-08 18:27 | 美しい罠 | Comments(0)
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