人気ブログランキング | 話題のタグを見る

nothing hurt

yuca88.exblog.jp ブログトップ

屋根裏部屋の花たち

屋根裏部屋の花たち_a0192209_22252385.jpg屋根裏部屋の花たち(1979年)
Flowers in the Attic
V.C.アンドリュース

1950年代のアメリカ。私はなにひとつ不自由のないしあわせな少女時代を送っていた。「私にとって、人生とはすばらしい真夏の一日のようなものだった。」私には優しい兄クリス、双子の弟と妹、そして誰よりも素敵なパパとママがいた。ところがある日、思いもかけない不幸が私たち一家を襲う。交通事故で最愛のパパを失ってしまったのだ―。その日を境として、あとに残されたママと4人の子供たちの運命は一変した。母の実家のヴァージニアに向けて出発した5人だったが、過去の過ちで勘当されていた母のために私たち4人は壮大な屋敷の屋根裏部屋に閉じ込められてしまった。この屋根裏部屋から出られる日はすぐに来ると信じながら―。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


一昔前のアメリカでは田舎のスーパーマーケットにも、必ずV.C.Aのペーパーバッグが売っていた。
アメリカの少女たちは、チョコバーとV.C.AかRRの本を一緒に買っていた。


初めて読んだあの日から、20年以上は経つが、何年かに1度無性に再読したくなる。
そのたびに古本屋に走り、入手してきたが、最近では古本屋でもあまり見かけない。
今回入手できたこの「屋根裏部屋の花たち」を手放さないようにしないと。


ゴシック・ファンタジーロマンの金字塔、だと個人的に思う。
ここまで怖い本は読んだことがない。

古い大きな邸宅、美しい兄妹、繰り返される罪、監禁、狂信的な祖母、飢餓、禁忌、若く美しい母。

これでもかというほど、ゴシックロマンスのテイストを詰め込んでいる本作は
ご都合主義の展開も見受けられるけれども、その奥に作者の人間への冷めた視線が感じられる。
一番この世で素敵なものは、人間の心。
一番この世で恐ろしいものも、人間の心。
ゴシック・ロマンの体裁をとっているが、何故か非常に、普遍的なものを秘めていて、
そのことがものすごく怖い。
同じことが、今も、どこかで、起こっているに違いない。


宗教やタブーに抑圧されているからこそ、思春期のエロティシズムが余計に感じられる。

今、流行の「トワイライト」シリーズも「屋根裏部屋の花たち」も思春期の少女を熱狂させた点では
一緒だけれども、決定的に違うのは「トワイライト」は自己探索のご都合主義的少女小説。
自分が自分であるためにヴァンパイヤーであることを選択していく。
そして「屋根裏部屋」は自己喪失の少女小説か。
主人公のキャシーは結局、幼少期を異常な状態で過ごしたために、
空想と現実の折り合いをつけることができずに、成長後も幼少期の空想の世界へ逃げ込んでいく。
現実の自分を失っていくだけなのね。
シリーズ最後で彼女は、結局「屋根裏部屋」へ還っていくしかないのだ。
それが、哀しい。
そして、罪は、繰り返される。



私たちは屋根裏部屋に住んでいた。
クリストファー、コーリィー、キャリー、
そして私、
今はたった三人だけ。


(初読・1989年11月30日)
by moonlight-yuca | 2011-05-06 23:32 | ■本■
line

blogお引越ししました。


by yuca
line