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パダムパダム ―彼と彼女の心拍音

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パダムパダム ―彼と彼女の心拍音 Padam Padam 全20話 (2012年 韓国 JTBC)
■演出:キム・ギュテ
■脚本:ノ・ヒギョン 
■キャスト:
チョン・ウソン(ヤン・ガンチル)
ハン・ジミン(チョン・ジナ)
キム・ボム(イ・グクス)

(あらすじ)
無実の罪をきせられ16年間服役しているガンチル(チョン・ウソン)は、仮出所を目前に控え複雑な気持ちだった。自分を陥れたチャンゴルに復讐したい、自分を捨てた母親を問い詰めたい、昔好きだったスミという女の安否も気になっていた。そんな気持ちのまま迎えた仮出所当日。ガンチルは仲間のグクス(キム・ボム)と一緒にすっかり変わってしまった街並みに圧倒され、まるで夢を見ているようだった。たくさんの人、車、混み合った地下鉄。地下鉄の中で獣医のジナ(ハン・ジミン)に痴漢と間違われ、運命的な出会いをすることに。これが奇跡の始まりだった…。

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このドラマについて、どこから語ろうか。視聴時、ずっと感じていた違和感を、最後まで引きずっていたな。微妙な空気感を。
1話、7話、15話とドラマのターニングポイントがあるのだけれども、そこに引っかかると、訳のわからない、退屈なドラマになるかもしれないし、あるがままの世界を受け入れて視聴すれば、世界は美しく、愛に溢れ、奇蹟に満ち溢れているという、感想になるのかな。
つまり、このドラマの感想は二極化される。
つまらない、かあるいは、心が温まるか。
そんな気がする。

恋愛ドラマかと思いきや、がっつり色々な親子の愛の形を描いたドラマでもあるな。そこは好き。

続きはネタバレ。





まず、引っかかるのがグクスが天使だという設定。
これはどういうことなのか、この謎を解きたいがために、私は、20話まで視聴したと言っても過言ではない。
文字通り天使なのか、それともこれはシニフィエ(象徴)としてなのか。
もちろん、最後までこの謎ははっきりと、解明されるわけではないけれども、もしかして天使の羽は、グクスだけじゃなくて、全ての人の背中にあるのかもしれない。
この美しい世界を愛し、全てを受け入れ、誰かを守りたいという、善良な人々の背中には、天使の羽があるのだ。それがただ見えていないだけで。
誰もが、誰かを助け、救い、助けられ、救われ、そういった情愛の円環の美しい世界に生きている。
奇蹟は、この世界には満ちている。
ガンチルが言ったように、「この一瞬一瞬が奇跡で、人生の全てが奇跡なのだ」という、一言に、「パダムパダム」の世界観は、現れている。

だから、ずっと、私が感じていた「世界はそれでも美しい」というのは、間違っていなかった。
映像から、光と影から、ガンチルのジナを愛おしそうに見つめるまなざしから、このドラマの端々から、作家ノ・ヒギョンの訴えたいテーマが感じられ、心を温かくさせる。

天使はグクスだけではない。
私だって、あなただって、誰かのために心を痛め、誰かを愛し、この美しい世界で生きていけば、天使なのだ。
グクスが最後に言っていた「ヒョンが僕の天使だった。僕がヒョンを守っていたんじゃない。ヒョンに守られていたんだ」というセリフにもつながる。
誰もが天使だったのよ。
私は、「パダムパダム」を視聴しながら、そう感じたなぁ。


次に引っかかるのは、時間が繰り返すこと。
ガンチルが重大な危機に陥った時、正しい選択をするまで、彼は時間の檻に囚われる。
このリフレインはSF的手法で、とても面白いなぁ、と感じたのよね。しかし、ダメな人はダメかも。
このことをグクスは「奇跡」と言っていたけれど、実はそうじゃなかったのよ。
奇跡というのは前述にもあるように、「生きている一瞬一瞬」のことであるのよね。

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ファンタジー色が、以上の2点から非常に強く感じる「パダムパダム」だけれども、実はものすごく普遍的なことを描いているドラマなの。
使っている手法は、斬新だけれども、テーマは普遍的。だから、心にすとんと入る人には、いいドラマだったなぁ、と思うんだろうな。
何より、ガンチルが「生きていることが幸福だと感じる心が、この不条理な世界に勝利する唯一の手段」みたいなことを言うのだけれども、強く賛同。

韓国ドラマでは、自分を受け入れなかった世界に、陥れた人々に復讐するというのが、好まれるテーマだけれども、「目には目を」的な報復では決して、「復讐」ではないと、私は思っているの。
「優雅な生活が最大の復讐である」という格言のごとく、ガンチルは無実の罪を着せられたり、不治の病に侵されながら、「幸せだ」と感じる心。そでがこの不条理な世界に打ち勝つ、たった一つの答えなの。
韓ドラでは、なかなか、この境地いたる主人公を、見掛けないので、その意味でも、心を強く揺さぶられたな。

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ストーリーは絶賛しながらも、評価が若干低いのは・・・
チョン・ウソンが苦手だったから(笑)
ガンチルってなんだかバカっぽく感じたのよね。裏がえる笑い声、子供じみたしぐさ。青年時代を刑務所で過ごしたがために、情緒面は少年の無垢な心を抱いている・・・と表現したかったのでしょうけれども、なんだか私の目にはちょっと、幼すぎる人に見えてしまって。
そういう意味でも「白痴」のムイシュキンとかぶっちゃうのよね~

ガンチルはもっと、大人で、綺麗な心を持ちながら、周りの人を深く包み込んで、辛い時でもぐっと飲み込み、どこか影のある・・・そんな大人のダンディズムを感じる複雑なキャラクターだと思うわけです。
幼稚なキャラに見えちゃうと、どうも苦手意識が先走って、ドラマにのめり込めなかったです・・・
これは、あくまで個人的な好みなので。

いや、でも20話ラストシーンのチョン・ウソンは、心からすげー、体当たりの演技だと思った(爆)
ここは、必見です!

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評価が低いもう一つの理由は、ガンチルを取り巻く悪意に、あまり説得力がないということ。
美しくて不条理な世界なので、悪意も不条理なのではあるけれども、あまりにその悪意が自己保身のための、ちっぽけな癖に、19話まで引っ張るの~?って思っちゃいます。
これがね、説得力がない。
いや、しかし、悪意なんて、些細なことから始まって、人を傷つけるにしても、あまりにリアルじゃない設定なのよね。巨悪でもないし、なんだかなぁ、という感じ。


この2つがなければ、美しい綺麗な奇跡の物語だと思います。
ぶつぶつ文句を言いながらも、前のめりになって視聴したわね。
世界が美しい、と感じる心を思い出させてくれたドラマです。
by moonlight-yuca | 2012-06-02 22:44 | パダムパダム
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