悪貨
■原作:島田雅彦
■監督:権野元
■キャスト
宮園エリカ (黒木メイサ)野々宮冬彦 (及川光博)
島袋一郎 (林遣都)
郭解 (石橋蓮司)
後藤伸五 (高橋克実)
日笠 (豊原功輔)
【あらすじ】
ある朝、ひとりのホームレスが目覚めると、足元に100万円の札束が入った袋が置かれていた。あっという間に流通していくが、そのカネはニセ札であることが判明。それは最新鋭の鑑定機もすり抜けるほどの精巧なニセ札であるにもかかわらず、明らかにニセ札だとわかるように作られていた。一体誰が、何の目的で作り、ホームレスに与えたのか?
一方、警視庁捜査二課の捜査官・宮園エリカ(黒木メイサ)はマネーロンダリングの疑いが掛かる宝石店に潜入捜査する。捜査線上に、巨額の資金を操る投資家・野々宮(及川光博)の存在が浮かび上がり、接触を図ろうとする。警視庁ではニセ札の出どころを探るため、通称、フクロウと呼ばれるニセ札鑑定のスペシャリストが召喚される。
そこで彼は、ニセ札に込められた自分宛てのメッセージに気付くのだった。
様々な人物の思惑が渦巻くなか、エリカは次第に野々宮の計画へ巻き込まれながらも、彼の真の目的を知ることになる・・・
ってことでwowowのオリジナルドラマを視聴しました。このオリジナルドラマ、配役も渋いし、映像も映画のようにアングルも凝っていたりして見応えがあるのですが、毎回思うのはどうにもあっさり味付けなのよね。
TBSとの共同企画の「ダブルフェイス」は、もともと原作が秀逸なので別格として。
wowowとしてはかなり精力的に地上波ではスポンサーの絡みで放映できないような原作をもってきて、ドラマ化をしてくれます。
その意気込みには感動するのだけれども、どうしてこうも毎回あっさりなのかなぁ。
それとも韓国のコテコテドラマに毒されてしまったのかしら、私が。
今回ミッチーは野々宮と言う謎の男を演じているのですが、このタイミングで「ノノ」と聞いてしまうとどうにもこうにも笑いがこみ上げてくるのは、原作のせいでもましてやミッチーのせいでもないのですけれどもね。
県議のノノちゃんが悪いのですけれども。
さて本題。お金に惑わされる愚かしい私たち人間の欲望を描こうとしたこのドラマ。
誰にも見抜けない偽札は偽札なのか、それとも本物と言っていいのか。
人間の欲望と通貨は密接にリンクしている。
しかしこのドラマでマネーゲームに全世界が翻弄されている現在の世情を痛烈に皮肉るというわけでもないのは、野々宮とエリカのおとぎ話のような恋愛感情を綺麗に描こうとしすぎたせいかしら。
野々宮が恵まれなかった子供時代、貧乏がゆえに死んでしまった両親の復讐のために日本経済を破たんさせようと目論む影のある男がよ、「君は僕を裏切らないし、僕も君を裏切らない。君だけは裏切らない」
なんて甘ったるい言葉をだよ、物語開始たった4話で語るなんて。
複雑怪奇に屈折した悪役スキーの私からしたら、てんで甘っちょろくて見るに堪えれません。
悪役はだね、悪役に徹しないと。
どこまでも堕ちていく自分自身を冷静に見つめながら、復讐の中でふいに目覚めた恋の嵐に戸惑う。その恋の愚かしさを十分に知りながら、自分の甘さを知りながらも淡々と悪事を進めていく。
これが私の理想の悪役です(笑)
ミッチーの演じる野々宮は、冷徹ににっこり笑って見せる笑顔の端々から、今にもこぼれおちそうな、誰かに助けを求めているような、そんな痛々しさがあふれ出ていました。
しかし痛々しすぎて悪役というには物足りない。
野々宮と潜入捜査官のエリカの互いに互いを欺きあいながらも惹かれあっていく男と女というニュアンスが全く感じられないのが、このドラマがあっさり風味な理由の一つなのかしら。
ミッチーと黒木メイサの相性があまりよくないような感じがします。
どうにもこの二人のやり取りが絵空事に見えてね。
野々宮の肩に触る仕草とか、ねっちこいまなざしで見つめているさまとか、絶対アッチの関係の人だと思います。
いろいろと妄想が進んでしまう郭解を石橋蓮司が怪演。さすがです。
しかし何と言っても「時効警察」の十文字疾風が大好きです。
そんな名プレイヤーな彼が日笠というエリカの上司役なのですが、どうにもこうにもおさまりが悪い。
上の言いなりになる出世主義の警察官にも見えないし、真実を追ってひた走る警察官にも見えない。良くも悪くも凡庸な上司なんです。でも豊原さんが演じるからかな、ところどころ狂気のきらめきが見えてゾクッとするのですが。
結局惰性で5話まで視聴しましたが、原作が悪いのか(あ、言っちゃった・笑)、脚本家が悪いのか、それとも主演の二人の相性が悪いのか、なんともいわく言い難い視聴感だけが残りました。
豪華キャストを持ってきて、このドラマの出来はもったいないなぁ。
キャストと映像に力を入れ過ぎて脚本が追いつかない感じがします。
wowowのドラマは毎回チャレンジングだなと感心するのですが、どうにもこうにも記憶に残らないドラマが多いのですよね。
この後のラインナップもすごいのに。
「贖罪の奏鳴曲」(三上博史)、「硝子の葦」(相武紗季)、「翳りゆく夏」(渡部篤郎)、「天使のナイフ」(小出恵介)。
ほらね江戸川乱歩賞の作品が軒並みラインナップだよ。
どうかあっさり風味に味付けせずに、心を揺さぶるようなドラマに仕上げてほしい。
★★
by moonlight-yuca
| 2014-12-24 19:31
| ■日本ドラマ■